FAKE2(2019)

Yuka hasegawa “FAKE2”at lucky happy studio

彼女の一連のヌイグルミ作品は誰もが知る人気のキャラクターのようではあるが何 処か違う。

既存のヌイグルミのようでいて似て非なるものだ。不完全でたりない形 状は中国の遊園地にいる偽物のキャラクターにも見えなくもないし、旅行先の売店 に売られているパロディ商品にも見えなくもない。

彼女は"完全ではないものた ち"を注視し愛情を抱く。そして彼女のそうした不完全性への関心は歪さと可愛らし さ奇妙さをたたえ作品へと昇華される。

それらは一つ一つがフェルトや布で作られ パーツパーツを丁寧に繋ぎ合わせて作られる。

"完全ではないものたち"は唯一無二 の形状を与えられ、しかも生まれた瞬間に"何々に似ているが完全ではないもの"と して認識されるのだ。”フェイク”とは何なのだろうか。

今回のシンプソンズ&ピカチュウのヌイグルミ作品は従来の不完全な形状、フェイク に対する彼女なりの探求に加え更に奥深いユーモラスな皮肉が効いている。

ピカチ ュウの象徴である黄色いボディに顔はシンプソンズのパーツで制作された。

戦後、アメリカは日本に原子力産業を定着させたと言っても嘘にはならない。シンプソンズはブラックユーモアのアニメーションとして知られていてシンプソンズの

父親は原子力発電所で働く労働者だ。一方ピカチュウはキュートなネズミで自身の身体で電気をつくり自らの食を賄い外的から守る武器をも持ち合わせる。

戦後の日本はアメリカとの関係により多くの富を得、発展しその事が極東の国際情勢をシリアスなものにもしてきた。

彼女のこの作品は日本が極東の地にいながら大国アメリカとの関係を常に意識する社会そのものをユーモラスで艶やかなジョークで見事に作品へと昇華している。

また最新作であるFASEとなずけらた作品では昨今のSNS上でひしめく美への探求 を思わせる。彼女はこうしたSNS上の架空の風景を愛おしい人間の欲望のフィール ドと捉えている。

人々は映画スターになりたいのかもしれないしアニメの登場人物 になりたいのかもしれない。しかしこの風景の中では美への探求がいささか脱線し ていたり行き過ぎていたりもする。

人形に施されるメイクは奇妙なものである。口元のリップは唇を外れて頰に塗られているし大きな瞳は本来の位置にはない。

既製品にごく稀にあるミスプリントと美の探求者の行き過ぎたメイクには同じような愛くるしさがあるのかもしれない。

中村太一